手作り菓子工房 ペルシュのブログ|福井県鯖江市にあるケーキ屋

福井県鯖江市にあるケーキ屋さん、「手作り菓子工房 ペルシュ」スタッフブログです。「お菓子づくりは幸せづくり」をテーマにすべての ケーキをシェフが熱い想いを込めて手づくりで仕上げております。

ペルシュのスタッフがお菓子作りへの思い、商品レビュー、ペルシュで働く事の楽しさを伝えていきます。

第702回 芸術への憧憬

 

過去に新聞記事で紹介されていたことをきっかけにその存在を知った、西野カインさん。

 

www.fukuishimbun.co.jp

↑調べてみたらその時の記事が残っていたのでこちらを引用させていただきます。是非先にご一読いただき、本ブログへとお進みいただければと思います!

本人も仰ってましたが、私の絵は暗いタッチだから好き嫌いはハッキリ分かれるのだと。

 

ふとしたタイミングで前々からSNSでの投稿を見て、知ってはいたけれど行けなかった、福井市にある、賀茂神社で展示されている天井画を観に行く機会に恵まれました。というか、突然引き込まれる様に車を走らせたんです。不思議な感覚だったな。

そこで境内の原画を観て、1300年大祭で奉納した八咫烏(やたがらす)の絵と対峙した。西野カインという芸術に初めて触れた瞬間だったのだ。

糸を紡ぐように、一本一本、線を重ねていく。

刺繍の様にも感じられる。見てとれる。丁寧なタッチに感動したのを覚えています。

 

 

SNSでアップされている嘘のない、媚びない、赤裸々な彼女のタッチをみて、

 

 

自分自身を客観視したい。俯瞰で見て、いま現在の存在証明をしてみたい。

漠然と持っていた自身の欲求だったのですが

カインさんのフィルター越しに写る、菓子屋の私。谷下を描いていただきたい!と思ったのです。

 

 

 

 

図々しくも、偶然!!ペルシュのお客さまとしてご来店くださっていたカインさんに、その場で直々に絵画の依頼交渉をさせていただき、快諾を得ることができたんです!なんたる偶然!(2回目)

(綺麗な赤髪の方が店内にいらっしゃるので近くで見てみたい!という変なきっかけではありましたが)

 

 


その後はメールで依頼内容について、どんな風に絵を描いてほしいのか?というやりとりをさせていただき、実際にお会いして、絵にどんな想いを込めたいのかという問診を、お話ししながら進めさせていただきました。

 

これまでの自分の経験を公私含めてカインさんにお伝えし、描き上げていただいたものです。

 

カインさんから手渡しでいただき、開封するまでの緊張感。

 

 

初めて見た第一印象。

 

カインさんらしい画風ですが、全く違う。とも言える。

とっても不思議な感覚に襲われたのを覚えています。

モノトーンの作画をずっと観てきた身として、水彩が散りばめられていたことが最も印象的だったのでしょう。

 

 

 

 

 

私のために描き上げていただいた作品について、いろんなことを伺いました。

この箇所はどうしてこういった描き方なのか?とか、コンセプトや解釈とか。

普段、作品を通じて意識することは詮索しすぎないことです。特に音楽の歌詞の世界だとそうですが、実体験であるのかどうとか何処其処の誰だ。みたいな根掘り葉掘りのそれですよね。感覚や感性はそれぞれ捉え方が様々でイイんですよ…個人的にはそう思っていますし、むしろその方が面白いって感じてます。

 

今回いろいろ聞いたのは描き方、色合いの付け方など…技法についての質問が多かった気がします。そもそもカインさんの作品でこれだけ彩があること自体珍しいことですので。

 

 

 

 

個人的な感覚の投影を落とし込んでいただいたものですが、ひと味違った西野カインの世界観を是非一度ご覧になってみてくださいね。

店舗奥、喫茶スペースに飾っております(ちなみに額装もカインさんプロデュースです)

 

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後日談、カインさんとのやりとりでディスカッションしたこと

ケースにずらりと並ぶお菓子たち。それを選ぶ姿を見て

 

家族のために、大切なひとの為にと、何が良いかな?と。

贈るお相手、そのひとのことを思い描き、想いを馳せる。

思案にふけるその姿を想像するだけで愛おしいキモチになる。

 

誰かのためにどうするとイイかな?といろいろと悩み考える。コレって、案外楽しくないですか?確かに「わー!どーしよー!わかんねー!」ってなる時も多々ありますけどねww

 

「つくれる限度」というのが年々狭まってはいますが、楽しい場で在ってほしんですよね。ケーキ屋って。くどいかもしれませんが、屋号にmaison de gâteau (お菓子の家)を冠しているのはそういった理由で、できる限りたくさんのアイテムで店内をお菓子でいっぱいにしたい。という欲求があります。

 

 

食卓という集いの場に、自分の携わったものが、よもや主役というカタチでその場に華やぎを与える。 

 

コレも自分にとってのジレンマなんですが、お客さまとのやりとりは商品のお受け渡しで終わってしまう。それこそ最近だとSNSでタグ付けしてくださって感想など書いていただける(随時お待ちしてます) のですが、皆んながワンホールのケーキを囲むわけじゃないですか。

 

そういった想像力を働かせてみると、まだまだ何かができるような気がしてます。

美味しいお菓子をつくる、ということに留まらず、イベント性の高いアプローチができるんじゃないか?って。

 

止め処ない会話の中で、家族という距離感について何度もグッと胸に刺さることを仰ってくれたカインさんでした。今原画を展示してある、店舗奥の喫茶スペースでご来店される方々の成り行きを観ながら思ったことを言い合うみたいな一幕で、特に印象に残ったこと、私自身が注視していること、目指していることなどを常々的確に感じ取っていることに大変感銘を受けました。

 

あと、カインさんってココロの情景をとても上手に切り取る方だと思いました。

勿体無くも、有り難くも感じた言霊。自身の言動ひとつひとつに責任と感動を与えられる様、絶え間ない勤しみを。素直に感じた、滲みたのでした。

 

食の世界に身を置いている傍ら、芸術というものに憧れていて、それこそ「食べる」という所作。五感のひとつを司どる味覚という感覚を通じて、一体どの様な表現ができるのかな?ってずっとずっと考えてます。

なんか烏滸がましくも、カインさんと依頼させていただく画のお打ち合わせに来て頂いた際に、彼女をイメージしたお菓子を作成してお渡しさせていただきました。

艶やかなグラサージュを施した上からチョコレートスプレーを吹き掛けて、あえてくすんだ雰囲気にしたり。。自分なりの表現方法を見て欲しかった。なんて稚拙な思いつきでもあったのですが、喜んでいただけたので何よりでしたね。

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自分の半生を振り返ることが今回の自画像を依頼したいと思うキッカケになった、秘めたる感情の源

 

もうアレですよね。菓子つくってる時間が人生の半分以上占めてるんですよ。ちなみに来年で職歴30周年だ!

社会に出てからずっと同じことを続けているってすごいことだ。って言ってくださる方もいらっしゃるんです。ペルシュオープンして21年だもんね、それはすごいのかも。皆さんが変わらず来てくださるから出来ているんです!

 

そうは言っても、自分では常に焦燥感すらあって。自分から菓子をつくるということを取ったら何が残るんだ?ってくらいの菓子バカ。だからまあ同じことの繰り返ししか能のない自分にとってはありがたい限りですね。変わらず自分の納得できる菓子を作り続けたいものです。

 

ちょっと前の自分だと、常に新しいをアップデートしていかないといけない。って脅迫概念みたいなものがあって。それで新しいを突き詰めていくと、難解なものが出来がちになる…笑 

どういうことかと言うと、日本人にとって馴染みの薄い食材だったり。最近だとエルダーフラワーは東京ではブライダル関連でメジャーな食材らしいのですが、そのフレーバーってピンときますか?

過去にグレープフルーツとジン(リキュール)、エルダーフラワーをペアリング(組み合わせた)プティガトーを作成したこともありましたね。

エルダーって。。なんだ。。?みたいな感じだったのに、ジュニパーベリーの香りを付けたリキュールが「ジン」ということで急速につくりたい欲求に駆られちゃったり。

不明瞭なところにひとつ知ったものがあると、途端に親和性というか。それならわかる!引き出しを増やしたい!みたいな興味本位も持ち合わせた人種です。

 

 



想像を掻き立てるというのは常に冒険心から始まるのですよね。

シンプルに食材同士の組み合わせが訴求させることには限度がある様に感じてます。

”ケーキ屋”としてやっている以上、やっぱり根底にあるものは分かり易さ、馴染み深さが大切なんですよ。

 

 

 

苦味のあるもの、酸っぱいもの、味覚としては「嗜好」寄りであると思いますが、その奥深さを知っていただきたい!と思うものです。だから分かり易さ馴染み深さも大切にしつつも、同時に新しい開拓のキッカケの一助になれる様な新しい提案もしていきたい。そういった部分も大切にしています。

 

 

 

結局のところ、美味しいってなんだろう?

 

なんだかとんでもなく漠然とした疑問が脳裏を過ぎる(よぎる)ことがあります。

疑う余地もないことについて考えを巡らせる。美味しいって満足感についての定義について疑問を投げかけるってまあまあ末期なんじゃないかと自分で思います。

 

味覚というセンサーを通じて、ヒトは美味しさに対して歓喜する。しかし、その度合いはまちまちで、その人それぞれが持ち合わせる趣味嗜好が顕著に現れるのが、味覚というものなのかも知れないですよね(味覚に限ったことではないですよね、冷静に考えたら)

 

自分の知り得る限りの美味しさの引き出しを皆に伝えたい。もしかしたらエゴなのかな?

 

 

もしひとつだけ間違いのない事実を述べるのであれば、味覚というものは多幸感に直結するような感覚にとても近しい位置にあるように感じてますね。食べるって基本欲求のひとつですから。原始的、咀嚼するという喜びを直向きに追い求めている情熱が伝わってほしい!そんな気概で日々取り組んでいます!

いま一度、カインさんのことについて

能登の被災者支援の為、チャリティで描かれた原画です。

 

 

 

祈り

お気に入りの一枚です。

諸事情により、大切に保管している一枚ですが、ある意味とても愚直に、そして嘘偽りのない西野カインという芸術からとても大きな学びをたくさん得ることができています。自分で感じる感性をより真っ直ぐに表現していける様に。尽力したいものです。

 

来たる4月26日から28日までの三日間、個展も開催されるのがとても楽しみです!

 

 

 

 

変わらず取り留めのない内容で且つ、芸術家までも巻き込んでしまったブログ更新となってしまいましたが、変わらず御支持くださいましたら幸いです。

 

昨年10月に作品を納めていただき、その前後から思いの丈が浮かんでは消えて無くならない様にと、端末にはいつもひとこと、ふた事と、書き留めた言葉があり、それらをつなぎ合わせていくと、こんなにも脈絡もない長文になってしまいがちです。ただアウトプット自体は常々大切だと思っていて、ココロがぬかるんでしまうのも嫌だな。そう思ってます。それではまた。